私が思う鍼灸上達の近道はよい師匠に弟子入りすることです。師匠から経験を引き継ぐわけですね。伝統を継承するとも言えます。そうして毎日の臨床からさまざまなことを学ぶわけですが、このときどのようなことに意識を集中するかで成長に差が出てきます。では前回の技術の項目に合わせてみていきましょう。
・選穴(使うツボの選択)
患者さんが訴える症状と先生が使う経穴(ツボ)との関連性をよく考えます。何年かすると使ったツボを見ただけでどのように考えているかがわかるようになってきます。
・取穴(正しいツボの位置、その探り方)
流派によっては教科書に書かれているツボの位置と大きく異なることがよくあります。これは生きている人間を相手にしているので当然です。人それぞれ顔も違えば性格も違うようにツボの位置も人によって違います。
鍼灸の名人・沢田健先生が「書物は死物なり、死物の古典を以て生ける人体を読むべし」とおっしゃるとおり、生きている人体をよく観察しなくてはいけません。
特に先生から抜鍼を指示された場合は、その取穴されたところをよく触ってツボの感覚を身につけましょう。
・刺鍼技術(どのように刺激するか、はりの深さはどのくらいか)
先生が行う手技をよく見ましょう。旋然術、雀啄術、弾鍼術などどのような手技をどのタイミング、どのツボ、どんな症状で使い分けるかを観察します。またはりをどのくらいの深さに刺入しているかを見ます。
・コミュニケーション
患者さんと先生との会話をよく聞きます。どのような質問に対してどのように答えているかなどよく注意して聞きましょう。
あと自分1人でできることとして、プロ野球選手が毎日バットの素振りをするように鍼灸師もはり、またはお灸の練習をしなくてはいけません。正しく取穴できても技術が未熟では効果を引き出せません。技術の錬磨によってのみ患者さんの苦しみを救うことができます。
ある先生が鍼灸師の成長とは去年治せなかった病気が今年治せるようになることだとおっしゃっていました。私もこの言葉を胸に日々技術の向上を心掛けています。
まずその師匠を見つけるのが大変だ!という声が聞こえてきそうですが、真剣に鍼灸のことを考えていれば知り合いの紹介など意外なところで縁がつながるものです。あきらめずにがんばりましょう!
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