2016年12月06日

陰陽学説の基礎B消長と転化

陰陽の消長とは陰と陽の量が増えたり減ったりすること、転化は陰⇒陽、陽⇒陰へと変化することです。これだけだとわかりづらいので1日の陰陽の変化を例にして考えてみます。

まず昼間のように太陽が昇っている時間は陽の量が多く、夜間の暗い時間は陰の量が多くなっています。朝に日が昇るとどんどん陽の量は増えていき、昼の12時に陽は頂点を迎え、そこから夜に向かって陽の量は減り、反対に陰の量が増えていきます。そして深夜の24時に陰は頂点を迎え、朝になるに従って陰の量は減り、再び陽の量は増えていきます。
陰陽の消長と転化.gif

このように昼の12時と夜の24時に陰と陽が切り替わるのが転化、そこを頂点として陰と陽の量が増減するのが消長です。これは1年を通した四季の変化も同様で、夏は陽が多く、冬は陰が多い、春と秋はその中間といった感じです。

ではこの陰陽の消長と転化を臨床ではどのように考えるのか?まずは人体に当てはめて考えてみます。東洋医学は自然界と人間は同じと考えるので、人間の中でも昼と夜で陰陽が増減します。例えば自律神経でいうと交感神経が陽で副交感神経が陰に相当します。

人が昼間仕事や勉強、遊びなどで活発に活動する時間には交感神経(陽)が優位になり、夜寝る時間になると副交感神経(陰)が優位になります。自律神経が乱れると出てくる症状に不眠症がありますが、これは本来副交感神経が優位になってリラックスする時間に交感神経が優位になってしまい、興奮して眠れなくなった状態です。
つまり陰が多くなる時間なのに陽の量が多くなってしまっているので、はりで治療する場合は陰虚(陰の不足)として捉え、陰の量を増やして陽を抑制するように施術していきます。

他には体が冷えている患者さんには温めることがありますが、あまりに強く温めすぎると発汗してかえって冷えてしまう場合があります。よくあるのが腰痛の患者さんで温めると楽になるからと風呂に入ったまではいいけど湯冷めしてしまい、余計に腰を冷やして痛みが増してしまったということがあります。
それとは逆に氷で強く冷やすと低温やけどで発熱してしまう場合なども陰陽の転化で「陰が極まれば陽に、陽が極まれば陰となる」という性質のため注意が必要です。

「消長と転化」は治療はもちろんのこと、生活する上で健康を保つためにも大切な概念です。よくある陰陽の図もこの「消長と転化」を表現しています。
太極図.gif
この概念が理解できれば陰陽の考え方がより身近になると思います。

次回は陰陽の基礎C可分です。
posted by 続木はり院 at 21:20| 東洋医学