
易では万物の始まりをあらわす太極から陰陽が分かれ(両儀)、さらに陽から老陽(陽)と少陰(陰)、陰から少陽(陽)と老陰(陰)に分かれ(四象)、さらに四象からそれぞれ陰陽に分かれて八卦ができます。
易の話はとても難しいのでここまでにして、では陰陽の可分をどのようにして治療に活かしていくかを考えていきましょう。
まず陰陽の可分とは視野を広げてみたり狭めてみたりして、目的に応じてピントを合わせることだと考えています。例えば新規で腰痛の患者さんが来院された場合、痛みが強く一人では歩けない状態(実)なのか、立って歩くのには問題ない状態(虚)なのかを観察します。そして話を聞く中で発症からの日数が短い急性期(実)なのか、持続的な痛みが続く慢性期(虚)なのか、さらに局所に触れてみて熱をもっている状態(実)なのか、熱がない、もしくは冷えている状態(虚)なのかというようにどんどん細かくみていきます。
(※補足:実とは過剰や停滞、強いイメージで陽、虚とは不足や弱いイメージで陰となります。)
このように全体⇒局所、場合によっては局所⇒全体というように、焦点を変化させて病態の本質を探っていくことを陰陽の可分が言いたいことだと思っています。
以上で陰陽の基本的概念の説明は終わります。ここでは鍼灸治療に当てはめて考えてきましたが、東洋医学の考え方は元々は東洋思想、東洋哲学を人体に当てはめて理論化したものです。ですから陰陽学説は治療だけでではなく人生をどのように過ごすか、対人関係やあらゆる仕事をする上でもヒントをくれる考え方なので、勉強してみると面白いと思います。
現代の人たちには陰陽という言葉はあまりなじみがなく、人によってはあやしいものだとして敬遠されがちですが、日本の伝統行事のほとんどは陰陽学説や五行学説と関連があります。このことについては過去の記事(節分、土用の丑)にありますので、興味があれば覗いてみてください。