2016年11月09日

中医学と経絡治療の違い

鍼灸業界にはさまざまな流派がありますが、その中でも比較的勉強されている方の多い中医学と経絡治療について私なりの見解を簡単に述べさせてもらいます。

中国で成立した中医学と日本で成立した経絡治療、その理論と治療方法の違いはやはり資格制度の違いが大きいと思います。
中国で鍼灸をする人は中医師であり、同時に漢方薬を処方することができます。ところが日本の鍼灸師ははりとお灸だけで漢方薬の取り扱いはできません。

そのため中医学では漢方薬のための理論と鍼灸のための理論が統一されている必要があり、口から飲み込んで腸から吸収される漢方薬の特性から臓腑を主体として理論が構築されています。

一方日本でははりとお灸しか使えないため、体表からの刺激が主体となります。そこで内臓と身体の末端部をつなぐライン=経絡の流れを整えることによって全身を調整するという考え方を中心として経絡治療が構築されました。

最近では雑誌やテレビなどで見かけることがある薬膳は東洋医学の考え方をベースとした健康食ですが、中医学の理論で紹介されていることがほとんどです。ですから雑誌に書かれている内容をもとにして鍼灸院の先生に質問をしても会話がかみ合わないことがあるかもしれません。それは上記で説明したとおり治療のベースとなる理論が異なるためです。

ちなみに漢方薬にもいくつか流派があって日本漢方などもあるそうですが、薬の方は私は専門外なため説明することはできませんのでご容赦ください。
posted by 続木はり院 at 21:51| 東洋医学

2016年11月02日

東洋医学の流派

前回新しい教科書が中医学になったと書きました。中医学は東洋医学の流派の1つですが、今回はその流派について説明したいと思います。

まずなぜ同じ東洋医学に複数の流派が存在するのか?東洋医学の原典の1つに黄帝内経というものがあり、およそ2千年前に成立したものとされています。その内容は当時の言葉で書き記されていまして、みなさんも学生時代に古典の授業で勉強した漢文で書かれています。
黄帝内経

原文を書き下し文にして、それをさらに現代語訳にしてと苦労した記憶があると思いますが、まず書き下し文にするレ点の位置をどうするか、現代語訳にする際の当時と現代との環境やものの考え方の違いにより、出来上がる訳は大きく違ってきます。その違いがそのまま流派の考え方の違いとなります。

冒頭の中医学はその考え方の1つで、1950年頃から中国において構築されてきたもので、古代の書物をベースにしつつも現代医学の内容も織り交ぜており、純粋な古典の内容とは異なることから現代中医学と呼ぶ人もいます。
世界的にはこの中医学がスタンダードになっており、書店に並んでいる東洋医学に関する本もほとんどが中医学になっています。

当院の治療のベースとなっているのは日本で構築された経絡治療というもので中医学の考え方とはまた異なります。ですから一般の方が東洋医学に興味を持って個人的に勉強された場合、中医学がベースになっているので当院で治療を受けるとツボの使い方や考え方が違うので、あれって思うことがあるかもしれませんね。
とはいえ鍼灸学校の教科書が中医学になっている関係上、一通りは習っているので説明をすることはできますから遠慮なく質問してください。

次回は中医学と経絡治療の違いについて説明したいと思います。
posted by 続木はり院 at 21:33| 東洋医学

2016年07月12日

ジメジメした季節

7月も半ばに近づいてきましたがまだ梅雨はあけず湿気の多い日が続きますね。東洋医学では湿気の多い環境では「湿」が邪気となり身体に悪影響を与えます。これを湿邪(しつじゃ)といいます。今回は湿邪が身体に引き起こす症状について説明したいと思います。

湿邪は水分なので重く、下に流れる特徴があります。そのため身体や手足が重だるく感じるようになり、また上半身よりも下半身に症状があらわれやすいです。
湿邪は関節にたまりやすく、特に影響を受けやすいのが膝関節です。リウマチの患者さんなどでは低気圧が近づいてくると悪化し、晴天では症状が軽くなる場合が多いですが、体内に余分な水分が多い人ほど外界に湿気が多くなると影響を受けやすくなります。

また湿邪は五臓のの働きを低下させます。脾は主に食べ物の消化・吸収を行っているため、食欲が低下したり下痢しやすくなります。

手軽にできる対処法として、湿気の多い季節におすすめの食材がスイカや冬瓜です。ともに利尿作用がありますので、体の余分な水分をおしっこにして外に排泄する働きがあります。同時に身体の熱を冷ます効果もあるのでこれからの季節にはぴったりですね。

もちろんはり治療で身体のだるさや消化機能の改善をはかることができますので、つらい時期を乗り越えるのにはり治療を活用してみてはいかがでしょうか?
posted by 続木はり院 at 22:12| 東洋医学

2016年05月23日

暑邪に注意!

まだ5月だというのに暑い日が続きますね。名古屋では今日30℃を越えました。立夏を過ぎているので暦の上では夏になりますが、今日の気温は7月並の暑さだそうですね。
東洋医学では夏の気は「暑」で、夏は暑いのが当たり前ですが、度を過ぎた暑さや、今日のような季節はずれの暑さは邪気となり(暑邪)体調を崩す要因となります。身体が気候の変化についていけないわけですね。

では暑邪によって起こる体調不良はどんなものがあるのでしょうか。

暑邪は熱なので上昇する性質があり、また発散させます。多量に汗をかくため体の水分が失われると同時に「」も外にもれ出ていくため息切れや倦怠感などの症状が出ます。また頭に熱がのぼるとボーっとしたり頭痛やめまいがしてフラフラしたりします。
そして暑邪は五臓ではと親和性があるので暑いと集中力がなくったり意識がもうろうとするわけです。

対策としてはこまめに水分をとること、日中の屋外での長時間の作業は控えるなどがあります。現代での言葉でいうと日射病や熱中症に当たり、テレビなどでも注意喚起されているので皆さんも気を付けていると思います。

ところが逆に冷房を効かせすぎたりして季節はずれの寒さが「寒邪」となり、体調を崩すことが多いのでこちらも注意が必要です。特に女性は男性よりも身体が冷えやすいため職場が寒すぎるなどの声をよく聞きます。

タオルケットや上着を1枚羽織るなどして身体を冷やさないようにしましょう。
posted by 続木はり院 at 21:42| 東洋医学

2016年02月24日

春の気は風(ふう)

2月も終わりに近づき日も少しずつ長くなってきましたね。寒い日はまだ続きますが徐々に春の気配を感じられるようになってきました。そこで今回は春のメインの気である風(ふう)について書きたいと思います。

東洋医学では季節ごとに特徴をあらわす気がありますが、春は風となります。実際この時期は強い風が吹くことが多く、春になってはじめて吹く強い風を春一番と呼んでいます。

風は陰陽であらわすと陽性で、高く舞い上がり、変化に富むという性質があります。五臓ではと親和性があり、五行では木に属します。木という性質から、風にも物の成長を助ける働きがあります。

ところが風が過剰であったり、もしくは身体が弱っていると、風は邪気となり風邪(ふうじゃ)になります。

風邪は高く舞い上がるという特徴から人体の上部(頭、鼻、のど、目など)や皮膚表面に影響を与えます。そのため頭痛やめまい、のぼせ、鼻炎、目の症状が出てきます。ちょうどこの季節によく悩まされる花粉症の症状も当てはまりますね。実際花粉は風に運ばれてやってきます。

また風は吹いたり止んだりと気まぐれでよく変化することから風邪で出る症状も患部が固定せずに移動したり、症状が出たり消えたりします。

さらに風にはものを揺り動かす性質があります。風が吹くと樹木の枝葉が揺れますが、そのイメージから身体がふるえたりけいれんしたり、ふらつきを感じるめまいなども風邪の影響で出る症状です。この「動」の働きからイメージを膨らませてマヒも風邪の症状に含めます。例えば車に乗っているときに窓を開けて顔面にたくさん風を受けると翌日あたりに顔面神経マヒになってしまうことがあります。

風邪によりあらわれる症状に対するはり治療では親和性のある肝経のツボを使ったり、風の字がつけられたツボ(風池、風門など)を使って治療します。
予防策としては窓を閉めるなどして風を避けることです。特に今の時期はまだ寒さが残るため、寒と風が合わさって風寒の邪気となり冷やす力がパワーアップするのでお気を付けください。
posted by 続木はり院 at 21:57| 東洋医学