2015年05月29日

経験医学とは?

鍼灸を含めた東洋医学は経験医学と呼ばれたりします。今回は経験医学とはいったいどんなものかを説明したいと思います。

経験医学とは名前のとおり経験を蓄積させて発達してきたものです。鍼灸ではあるツボに刺激を加えたらある症状がとれた、このツボに刺激を加えたらこの症状がとれたというように、効果があったという事実を積み上げてきました。
漢方薬でははるか昔神農(炎帝ともいいます)という人物があらゆる草木を食べて、それが薬か毒かを確かめたといわれています。日に何度も毒にあたって死にかけたといいますから、まさに命がけですね。

ただ経験の蓄積だというと悪く言えば場当たり的だとも言われかねませんが、およそ2000年ともいわれる膨大な時間における積み重ねを考えればその懸念は解消されるでしょう。

経験医学(東洋医学)の優れた点は現代医学では原因不明の症状にも対応できるところです。2000年の間に書き記されてきた書物を読めばだいたいの症状とその治療法がかかれています。ただ問題点としては経験医学とよばれるように、その治療効果は施術者の経験と技術に大きく左右されるところにあります。

しかし医学という名前がつく以上、因果関係の説明ができなければいけません。古代の人々はその当時の時代の最先端の科学的思考法である「陰陽説」「五行説」と関連づけて治療体系を築き上げてきました。
現代では研究機関などでマウスなどの実験動物にはり刺激を加えたりしてそのメカニズムを解明しようとしています。実際それまで謎とされてきた鍼灸の効果が、まだ一部とはいえ解明されてきています。

さらなる時間をへて鍼灸のメカニズムが解明されていけば、その新しい理論と古くからの経験を組み合わせてより病気に苦しむ方々の手助けとなることができるでしょう。

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posted by 続木はり院 at 21:49| 東洋医学

2015年01月27日

五行学説と鍼灸

前回説明した五行学説と鍼灸の関係を説明します。まず生命を維持する上で重要な五臓は五行に配当されます。肝=木、心=火、脾=土、肺=金、腎=水となります。そして五臓に連なる経脈も同じように五行に配当されます。(肝経=木、心経=火など)

鍼灸では病気になるときは必ず五臓の内のどれかが弱っていると考えます。当然治療する際はその弱った臓にアプローチすることになります。ここまでだと五行学説は必要ないと思われてしまいますが、ここからが重要です。

病気が長引くと弱った臓から相生、もしくは相克の関係で他の臓へ病が伝播します。例えば肝(木)が弱っているとしましょう。症状としてはイライラしたり、落ち着かないなどがあります。それが相克の関係にある脾(土)へ影響すると食欲不振、胃がキリキリするなどの症状が出てきてしまいます。

五行説.gif

使用するツボを選択する際には、その弱っている臓のツボを選ぶだけではなく、将来影響を与えるであろう臓のツボも選んでいきます。そうすることにより症状がまだ出ていない段階で対処することが可能になります。

東洋医学が病気の予防が得意な理由は、この五行学説の考え方をうまく利用しているところにあります。
posted by 続木はり院 at 21:44| 東洋医学

2015年01月23日

五行学説について

東洋思想の基本となるもので陰陽のほかに五行学説があります。陰陽学説では万物を2つに分けましたが、五行学説ではあらゆるものを木・火・土・金・水の5つに分けます。

木 ・・・ 植物が成長し、伸び広がっていくイメージ
      季節では春、方角では東、色では青

火 ・・・ 火が勢いよく燃え上がるイメージ
      季節では夏、方角では南、色では赤

土 ・・・ 大地が万物を育てるイメージ
      季節の変わり目、方角では中央、色では黄

金 ・・・ 金属のように固く、粛正し、収斂するイメージ
      季節では秋、方角では西、色では白

水 ・・・ 水のように潤し、下っていくイメージ
      季節では冬、方角では北、色では黒

そしてこれらはお互いに関係しあっています。木が燃えると火を生み(木生火)、燃えカスは土を生む(火生土)というように生み、生まれる関係を相生と呼んでいます。

また水は火を消す(木克火)、火は金属を溶かす(火克金)というように抑制しあう関係を相克と呼んでいます。五つの要素が相生・相克の関係によってバランスを保っている状態が理想となります。
他に土が中央に位置し、四方を支配するという土王説もあります。

五行説

陰陽五行説は古代の日本に伝わってから国家組織の中に組み込まれ、年中行事や医学、農業、政治などの基礎原理として実践されてきましたが、明治維新を境に迷信として退けられてしまいました。

今の私たちが陰陽五行と聞くとなんだかインチキくさく感じられますが、実は身近な暮らしの中にそれは息づいています。

例えば十二支があります。もともと十二支は12ヶ月の月日とか、1日の時間にも用いられていました。旧暦になりますが春(1〜3月)は寅・卯・辰で「木」、夏(4〜6月)は巳・午・未で「火」、秋(7〜9月)は申・酉・戌で「金」、冬(10〜12月)は亥・子・丑で「水」になります。
そして季節の終わりの18日間が「土用」になるので丑・辰・未・戌は「土」を含みます。

他に大相撲では天井の四隅から東の青竜(木)、南の朱雀(火)、西の白虎(金)、北の玄武(水)をあらわした房が下り、中央には土俵(土)があります。そこに上がる力士は東(陽)と西(陰)を示します。
そして行司が「はっけよい」(八卦よい:八卦は易の用語、易も陰陽五行で成り立っている)といいます。

このように陰陽五行は日本の文化と密接な関係があります。次回は鍼灸の治療と五行説がどのように関わっているか説明します。
posted by 続木はり院 at 21:49| 東洋医学

2015年01月20日

鍼灸と陰陽

前回に引き続き陰陽の説明をしますが、今回は鍼灸で治療を行う際にこの陰陽学説をどのように扱っているかを説明します。

東洋医学では人体は自然の中の一部として捉え、小宇宙と呼んだりします。ですから人体も陰陽で分けられ、頭や体の表面などは陽、下半身や内臓など深い場所は陰になります。そして気は陽、血は陰、また以前説明した臓腑では臓が陰、腑が陽になります。まずこれが人体の部位ごとの陰陽の分け方です。

これは体のどの部位に病があるか判断する際に用いられます。例えば病が陽にある、もしくは陰にあるなどと表現します。もちろん深い場所=陰に病があるほど重症です。

また体調をくずした人を観察すると、冷えている部分と熱をもっている部分が混在していることがあります。特に多いのが更年期障害で頭などの上半身は熱をもっていて汗をかいているけど、下半身は冷えている、いわゆる冷えのぼせの状態です。

健康状態では陰陽(この場合は寒と熱)が循環して、偏りのないのが理想ですが、体調をくずすと陰陽が分離してしまいます。
このときに活躍するのが鍼灸です。はりで手や足のツボを刺激して、上に昇ったままの熱を下に降ろします。そうして陰陽の調和がとれれば後は身体が自然と治っていきます。

もちろん実際はもっと複雑ですが、あまり長々と説明してもかえって混乱してしまうと思うのでこのくらいにしておきたいと思います。
posted by 続木はり院 at 21:34| 東洋医学

2015年01月16日

人体と陰陽

前回陰陽の基本について説明しましたが、今回は陰陽と人体の関係について説明します。

自然の陰陽の変化に伴って人体の陰陽も変化します。昼間の明るい時間は人間も活動的で体温も高く、交感神経が優位になっており、陽の性質が強くなっています。
夜になると体温が下がり、副交感神経も優位となり、眠りについたりして陰の性質が強くなります。1年での四季の移り変わりも同じ感じで変化していきます。

自然の流れに合わせた生活(例えば昼間は起きて活動し、夜になったら眠る)を送っていれば健康的に暮らせますが、反対に自然に逆らった生活、つまり夜更かしをしていつまでも起きていたり、昼なのに動かず横になっている、冬の寒い時期に薄着でいるなどといったことを続けていると人体の陰陽のバランスがくずれ、体調をくずしてしまいます。

繰り返しますが、健康の基本は自然の変化にあわせた生活を送ることが重要です。一見当たり前のことのように感じられますが、現代のような複雑な社会ではなかなか思うようにいかないのも事実です。

次回は鍼灸治療と陰陽学説の関係について説明します。
posted by 続木はり院 at 21:16| 東洋医学