前回の続きです。どの鍼灸師が治療を行っても同様な効果を出すことができる、つまり再現性を高めるにはどうするべきか?それは個々の鍼灸師が経験を積み重ね熟練するしかないと思います。ざっくりした表現になってしまいましたが、鍼灸が経験医学である以上、それが当然であるとも言えます。
では鍼灸における技術の高さとは具体的には何をもっていうのか?鍼灸治療を1つ1つ分解して考えてみたいと思います。
・病態把握 → 選穴
患者さんの状態を把握する方法には問診をはじめ脈診、腹診、舌診、原穴診、背候診など数多くあります。それらを駆使して判断した結果から使用する経穴(ツボ)を選択します(選穴)。当然病態把握が正確なほどより効果的な選穴が可能になります。
・正しい取穴(正確にツボをとらえる)
ツボは他の部位とは違った状態にあります。皮膚がゆるんでへこんでいたり、湿っていたり、ザラザラしていたりと様々な反応を示します。そのほんのわずかの差を感じとる指頭の感覚が重要になります。正確にツボをとれるかどうかで治療効果に差が出ます。
・刺鍼技術
いよいよツボにはりを刺入しますが、ただ刺すだけでは体に異物が入っただけにすぎません。いかにツボの効果を引き出し、体によい反応を起こすかが重要なポイントです。
ざっと思いつくところを載せてきましたが、これらの技術がある水準に達している鍼灸師が治療を行えば、ある症状に対して同様な治療効果を出すことができると思います。結局は日々の努力が大事だということですね。私もこの記事をかきながら慢心せず日々技術の研鑽に努めなくてはならないと気持ちを引き締めました。
2015年06月03日
鍼灸の再現性
前回は経験医学について説明しましたが、今回はその経験のために左右されてしまう再現性について考えてみたいと思います。
鍼灸における再現性では「ある症状に対してどの鍼灸師が治療を行っても効果を出せるのか」という点が問題となりますが、残念ながらその再現性は低いと考えられています。その理由は冒頭にも出ているように鍼灸は経験医学であるがゆえに、その治療効果は鍼灸師の技術と経験によって大きく差が出てしまいます。
治療効果に与える影響として考えられるのはツボの配穴(どのツボを使うか)、正しくツボをとらえているか、適切なはりの深さ、刺激量、施術者と患者さんとの間の信頼関係などいくつかあります。
つまりまったく同じツボを使ったとしても、同じ結果が出るとは限らないということです。実際私も修行時代、師匠の指示どおりのツボを使って治療していたところ、患者さんから「前回先生(師匠)の治療ですごく楽になったが今日はあまり変わらない」と言われたことがあります。その時は自分の未熟さを痛感し、それをバネにして必死に技術をみがいた思い出があります。
話が少しそれましたが、この再現性が抱える問題として、鍼灸の効果を科学的に検証しようとした場合、研究者の技量によって実験結果が変わってしまうという点があります。(その時点で再現性に乏しいと言われてしまいそうですが・・・)
つまり本来効くはずの症状に対して効果なしと結論づけられてしまう可能性があるのです。もしそうなってしまったら治るはずの患者さんが鍼灸院へ足を運ぶきっかけがなくなり、症状に苦しみ続けるという事態になってしまいます。
実験では同じ環境、同じ条件などで行われるものですが、相手の状態に合わせて治療方法を変化させる鍼灸にとっては相性の悪いものなのかもしれません。
次回はいかにすればこの再現性を高めることができるかを考えたいと思います。
鍼灸における再現性では「ある症状に対してどの鍼灸師が治療を行っても効果を出せるのか」という点が問題となりますが、残念ながらその再現性は低いと考えられています。その理由は冒頭にも出ているように鍼灸は経験医学であるがゆえに、その治療効果は鍼灸師の技術と経験によって大きく差が出てしまいます。
治療効果に与える影響として考えられるのはツボの配穴(どのツボを使うか)、正しくツボをとらえているか、適切なはりの深さ、刺激量、施術者と患者さんとの間の信頼関係などいくつかあります。
つまりまったく同じツボを使ったとしても、同じ結果が出るとは限らないということです。実際私も修行時代、師匠の指示どおりのツボを使って治療していたところ、患者さんから「前回先生(師匠)の治療ですごく楽になったが今日はあまり変わらない」と言われたことがあります。その時は自分の未熟さを痛感し、それをバネにして必死に技術をみがいた思い出があります。
話が少しそれましたが、この再現性が抱える問題として、鍼灸の効果を科学的に検証しようとした場合、研究者の技量によって実験結果が変わってしまうという点があります。(その時点で再現性に乏しいと言われてしまいそうですが・・・)
つまり本来効くはずの症状に対して効果なしと結論づけられてしまう可能性があるのです。もしそうなってしまったら治るはずの患者さんが鍼灸院へ足を運ぶきっかけがなくなり、症状に苦しみ続けるという事態になってしまいます。
実験では同じ環境、同じ条件などで行われるものですが、相手の状態に合わせて治療方法を変化させる鍼灸にとっては相性の悪いものなのかもしれません。
次回はいかにすればこの再現性を高めることができるかを考えたいと思います。
posted by 続木はり院 at 21:32| 鍼灸
2014年11月11日
鍼(はり)と灸の違い(その3)
今回は鍼灸の学生向け、または卒後間もない方向けの内容になります。
前回までの内容と同じような質問を学生からもされることがあります。本によってこのツボに灸をする、あのツボに鍼をするというように、ある本では鍼を使い、ある本では灸を使っているがその違いが分からないというものです。
これも前回説明したようにはりが得意な先生ははりを中心に治療するし、灸が得意な先生は灸を中心に治療します。つまりはりが得意な先生が本を書けばはりについての記載が多くなるし、灸が得意な先生が本を書けばお灸についての記載が多くなります。
どちらを用いるにしても経穴(ツボ)の効果を引き出すには技術が必要です。例え本にお灸をしろと書いてあっても技術があれば鍼でも効かせることができます。逆に技術がなければ鍼をしようが灸をしようが効果は感じらません。
理想では鍼も灸も自由自在に使いこなせればいいのですが、2つを同時に究めるのは非常に困難です。ある程度2つとも上達することはできますが、おそらくそこそこの技術で終わってしまうでしょう。目指すなら鍼の達人、灸の達人です。(とはいえメインとしないほうもプロとして最低限の技術は必要です。)
そこでどちらか1つを主体にしていくわけですが、では自分にはどちらが合っているのでしょうか?
それは「好きこそ物の上手なれ」の言葉どおり、より興味のある方、自分が受けたいと思う方でいいと思います。技術を上達させるためには患者さんに施術するとき以外でも常に練習を続ける必要があるため、興味がないと長続きするのは難しいでしょう。
ちなみに私の場合は自分のついた師匠がはりで治療していたので必然的にはりがメインになっています。
ですから現在治療院で修行中の方はそこの先生がやっていることを自分のものにできるようにするのが技術上達の1番の近道です。
関連記事
鍼(はり)と灸の違い(その1)
鍼(はり)と灸の違い(その2)
前回までの内容と同じような質問を学生からもされることがあります。本によってこのツボに灸をする、あのツボに鍼をするというように、ある本では鍼を使い、ある本では灸を使っているがその違いが分からないというものです。
これも前回説明したようにはりが得意な先生ははりを中心に治療するし、灸が得意な先生は灸を中心に治療します。つまりはりが得意な先生が本を書けばはりについての記載が多くなるし、灸が得意な先生が本を書けばお灸についての記載が多くなります。
どちらを用いるにしても経穴(ツボ)の効果を引き出すには技術が必要です。例え本にお灸をしろと書いてあっても技術があれば鍼でも効かせることができます。逆に技術がなければ鍼をしようが灸をしようが効果は感じらません。
理想では鍼も灸も自由自在に使いこなせればいいのですが、2つを同時に究めるのは非常に困難です。ある程度2つとも上達することはできますが、おそらくそこそこの技術で終わってしまうでしょう。目指すなら鍼の達人、灸の達人です。(とはいえメインとしないほうもプロとして最低限の技術は必要です。)
そこでどちらか1つを主体にしていくわけですが、では自分にはどちらが合っているのでしょうか?
それは「好きこそ物の上手なれ」の言葉どおり、より興味のある方、自分が受けたいと思う方でいいと思います。技術を上達させるためには患者さんに施術するとき以外でも常に練習を続ける必要があるため、興味がないと長続きするのは難しいでしょう。
ちなみに私の場合は自分のついた師匠がはりで治療していたので必然的にはりがメインになっています。
ですから現在治療院で修行中の方はそこの先生がやっていることを自分のものにできるようにするのが技術上達の1番の近道です。
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鍼(はり)と灸の違い(その1)
鍼(はり)と灸の違い(その2)
posted by 続木はり院 at 22:14| 鍼灸
2014年11月07日
鍼(はり)と灸の違い(その2)
前回の内容をまとめると鍼も灸も使い方によってあらゆることに対応できることになります。つまり効果は同様で、施術者の技術次第ということです。ですから鍼が得意な先生は鍼を中心に、灸が得意な先生は灸を中心に治療を組み立てることが多くなります。
同じように患者さんによっても鍼を受けるのが好きな方、灸を受けるのが好きな方がいると思いますが、鍼を受けたいときは鍼が得意な治療院、灸を受けたいときは灸が得意な治療院というように、うまく利用して頂ければいいと思います。(ちなみに私は鍼が得意です。)
しかし最近ではお灸専門の治療院は非常に少なくなってしまいました。理由としてはやけどのリスクや煙の問題などがあります。
以前雑誌の記事で目にしたことでは、ある地域で3代続いたお灸専門の治療院がやめた原因が近所からの煙のにおいの苦情だったそうです。
その一方で自宅で手軽にお灸を楽しむ女性が増えてきているそうです。これはシールで体に貼り付けて点火するだけの簡単なもので薬局などでも購入できます。
このように鍼灸がみなさんにとってより身近な存在になってくれると嬉しいですね!
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鍼(はり)と灸の違い(その1)
鍼(はり)と灸の違い(その3)
同じように患者さんによっても鍼を受けるのが好きな方、灸を受けるのが好きな方がいると思いますが、鍼を受けたいときは鍼が得意な治療院、灸を受けたいときは灸が得意な治療院というように、うまく利用して頂ければいいと思います。(ちなみに私は鍼が得意です。)
しかし最近ではお灸専門の治療院は非常に少なくなってしまいました。理由としてはやけどのリスクや煙の問題などがあります。
以前雑誌の記事で目にしたことでは、ある地域で3代続いたお灸専門の治療院がやめた原因が近所からの煙のにおいの苦情だったそうです。
その一方で自宅で手軽にお灸を楽しむ女性が増えてきているそうです。これはシールで体に貼り付けて点火するだけの簡単なもので薬局などでも購入できます。
このように鍼灸がみなさんにとってより身近な存在になってくれると嬉しいですね!
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タグ:鍼灸
posted by 続木はり院 at 21:06| 鍼灸
2014年11月03日
鍼(はり)と灸の違い(その1)
私の職業は鍼灸師です。しかし国家資格の正式名称ははり師、きゅう師で2つの免許から成り立っています。そして鍼灸師が働く鍼灸院では基本的に鍼と灸を用いて治療を行います。ではこの両者の効果の違いは何なのでしょうか?
みなさんのイメージでは鍼は筋肉をゆるめてお灸は体を温めるという感じだと思います。それでも間違いではありませんが、やり方によっては鍼で体を温めることができるし、お灸で冷やすこともできます。
お灸で冷やすことができるの!?と驚かれる方もいるかと思いますが、大きめのもぐさを燃やすとすべて燃え尽きるまでに時間がかかります。その間に体は汗をかきます。その段階でもぐさを取り去ることによって、体の中にこもっていた熱を汗によって発散させるわけです。
はりで体を温めるというのも、刺されたところは神経の反射によって血管が拡張し、そこに血液が流れ込んできます。血液は熱を運んでいるので当然そこは温かくなります。
冷え症の方は手足の血行が悪くなっていることが多いですが、はりによって血行をよくすることによって冷えが改善されます。
事実当院では鍼を中心に治療を行いますが、治療を受けた方は身体がポカポカしてきたとおどろかれます。
次回へつづきます。
鍼(はり)と灸の違い(その2)
みなさんのイメージでは鍼は筋肉をゆるめてお灸は体を温めるという感じだと思います。それでも間違いではありませんが、やり方によっては鍼で体を温めることができるし、お灸で冷やすこともできます。
お灸で冷やすことができるの!?と驚かれる方もいるかと思いますが、大きめのもぐさを燃やすとすべて燃え尽きるまでに時間がかかります。その間に体は汗をかきます。その段階でもぐさを取り去ることによって、体の中にこもっていた熱を汗によって発散させるわけです。
はりで体を温めるというのも、刺されたところは神経の反射によって血管が拡張し、そこに血液が流れ込んできます。血液は熱を運んでいるので当然そこは温かくなります。
冷え症の方は手足の血行が悪くなっていることが多いですが、はりによって血行をよくすることによって冷えが改善されます。
事実当院では鍼を中心に治療を行いますが、治療を受けた方は身体がポカポカしてきたとおどろかれます。
次回へつづきます。
鍼(はり)と灸の違い(その2)
posted by 続木はり院 at 22:03| 鍼灸